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「中学生月くんをいっぱい泣かせるお話​」

 ほんの数日前まで、僕はデスノートを拾ってキラになった事以外は、ただの成績優秀な中学生でしかなかった。
 全てが変わってしまったのは、中学の卒業式の日。
 あの日、僕は三年間親しんだ中学校の体育館にて、卒業生代表として答辞を述べていた。
 来なくてもいいと言ったのに、義務教育の間くらいは行きたいと言った母さんが、嬉々とした様子で僕を撮影していたのを今でも鮮明に思い出すことが出来る。
 式が終わってからは、後輩やクラスメイトの女の子達からボタンやら胸飾りの花をむしり取るような勢いでねだられたりして、さらには最後だから伝えるだけでもいいという健気な告白が複数人からあって、僕は早々にすぐ帰るのを諦めてしまった。
 それが良くなかったのだろうか。別々の高校になる友人との最後の会話も長くなり、結局僕が帰路に着いたのは、学校に居ることが許されるギリギリの時間だった。
 帰りが遅くなると察した時点で、母さんには先に帰って欲しいと伝えた。だから、日が長くなってきた春とはいえ、薄暗い帰路を僕は一人で歩いた。
 普段であれば同じ様に帰宅する人間とすれ違うことがあるような通学路なのに、その日は珍しく、何者かに図られたように誰も居なかった。と思うのは、この後、僕が奴によって誘拐されたからだろうか。けれどその時は、策略に嵌められているかもしれないという疑いなんて、微塵も抱かなかった。
 自宅まであと少し、その角を曲がれば家が見えてくるといった時。
 エンジンに細工でもされていたのだろうか。いつの間にか僕の背後からスモークガラスの車がとても静かに近づいてきて、接近に気付いた頃にはもう、僕の身体は車の中に引き込まれていた。

 

「月くん、ようやく会えましたね」

 

 車に乗せられるや否や、実行犯の顔を見る間もなく、目隠しをされて、身体を拘束された。
 その際に耳元で聞こえた、愛でるような心地で囁かれた僕の名前と、邂逅の喜びの言葉に、僕は背筋を震わせながら逃れようと身悶えた。
 けれど必死の抵抗も空しく、首筋に感じた冷たい痛みと共に、僕の意識はそこで途切れてしまった。


「月くん、おはようございます」

 

 窓の外から光を感じて目を開ければ、真っ黒な悪魔のような瞳が僕を覗き込んできた。
 そのあまりの顔の近さに驚いて思わず逃げるように身じろいだが、両手を拘束されているのに加え、力強い大人の腕によって抱きしめられているせいで今日も逃げることは叶わなかった。
 どうやら眠っている間、僕はずっとこの男――Lによって、ぬいぐるみのように抱きしめられていたらしい。
 Lは僕の頬にキスを落すと、ゆっくりと僕の身体を抱き起こし、自分の足の間に入れて後ろから抱き着いてきた。

 

「……ッ」

 

 帰りたい。と、心の中に浮かんだ言葉を口にしてしまえば、Lは酷く不機嫌になって、また僕に『酷い事』をしてくる。無論、僕が従順に振る舞ったところでLはその行為を止めることはないため、僕にとってはLの機嫌が良くても『酷い事』には変わりないけれど。
 それでも、Lが不機嫌か否かでは、その行為の加減が違うんだ、と。なんとかしてLの機嫌を損ねないように、僕は必死に悲鳴を飲み込みながら、Lに抱きしめられるという屈辱に耐えた。

 この男、Lが僕のことをキラだと断定し、どこなのか分からない建物に監禁して、今日で一週間が経過した。
 去年の十一月。テレビ中継でキラを追い詰めると宣言したリンド・L・テイラーは、本物のLではなく、キラがどこの地域に住んでいるのかを確かめるための偽物だったらしい。
 あの中継は、本当は全世界同時生放送ではなく、日本の関東地区でしか放映されていなかった。そして、リンド・L・テイラーが中継の最中に殺された事から、キラが日本の関東に居るのは間違いないと判断出来たのだと、Lは淡々と僕に説明した。

 

『以前のように放送中に教えてあげても良かったんですが、今回はやり方を変えてみようと思いまして。おかげで、今回はこんなに早く、月くんがキラだと断定できました』

 

 胸やけがしそうなほどのお菓子に囲まれた中で、僕にそう言ってきたLの表情は今でも覚えている。
 Lの言う『以前』という言葉は、話から推察するに前世のような、あるいは並行世界の可能性のような事らしい。
 当然、僕にはLの語る『以前』とやらの記憶は無いけれど、どうやらLの記憶では『以前』の僕もキラとして活動を続け、Lと戦っていたらしい。
 しかし、Lに『以前』の記憶があるならば、わざわざリンド・L・テイラーなんて存在を使わなくても、キラが活動をはじめた時点で逮捕出来たはずだ。と、僕は真っ先にLを問い詰めたが、Lはなんてことのない顔をしながら『それではゲームにならないので。月くんのことは知らないという体で推理をしました』なんて、ふざけた台詞を零した。
 けれど、僕がふざけるなとLに牙を向く前に、Lはさらに『訳の分からない事』を僕にしてきた。
 初めて、Lにそういうことをされた日のことを思い出してしまった瞬間。
 僕の思考を見透かしていたかのように、Lは僕の太腿に指先を這わせながら、耳元で楽しそうに話し始めた。

 

「昨晩は全然出来ない内に、月くんが気を失ってしまいましたから。今日は朝から、たくさんしましょうね」

 

 興奮した吐息と共に聞こえてきた言葉に、思わず背筋がゾッとする。
 けれど震えている僕なんてお構いなしに。否、子供に手を出す変態のことだ。僕が震えているのがより一層興奮するのだろう。Lはたった一枚、気休め程度に着せられたシャツのボタンを外しながら、僕のお腹を撫でてきた。

 

「今日もいっぱい、ここで私を受け止めてください」

 

 そう言いながらLの手は次第に下へと下がって行き、性器を経てからお尻へと延びていく。
 やわやわと、無骨な手に揉まれる感覚に、僕は耐えるよう必死に奥歯を噛み締めた。

 

「……っ」

 

 東京なのか、はたまた日本なのかすら分からない場所に監禁されて一週間。
 ほとんど毎日のように性行為をさせられ続けて、気がおかしくなりそうだった。
 けれど、どれだけ泣き喚いても暴れても、僕を犯すこの男には何も通じない。プライドを捨てて止めてくださいと懇願したところで、Lはとても楽しそうに僕を犯すだけだ。
 だから、抵抗したところで無意味なのだと学んだ僕は、Lが早く僕を犯す事に飽きるようにと、必死に無反応を取り繕う。

 

「月くんが寝ている間に解しておいたんですが……やっぱり起きていると緊張のせいか、閉じてしまいますね」

 

 僕のアナルを指先で突くように撫でまわしながら、Lは仕方のない子供だと笑うように僕を見つめてくる。

 

「もっとたくさん交わって、いつでもすぐに私を受け入れられるくらい、慣れていきましょうね」

 

 理解の遅い子供を導くように、まったくもって不愉快な甘さが含まれた声色で、Lは僕に向かってそう囁いた。
 絶対に、こんな行為に慣れてたまるものか。必ずLを殺してこんな場所から逃げ出してやる。と、怒りのまま方法を考えていた時、Lの指先が僕の中に侵入してきた。

 

「……ぅ、ん」

 

 僕が寝ている間に解しておいたというのは事実なんだろう。
 Lの筋張って神経質そうな指は、いとも簡単に僕の中へと二本、三本と入ってきて、ぐねぐねと気持ち悪い動きを繰り返す。
 初めの頃は、ただただ内臓をかき回されるような感覚ばかりで気持ち悪かった行為。
 けれど、最近はそればかりではないのだということをLに何度も教えられたせいか。Lの指先がくすぐるようにソコを刺激する度、生理的な反応故、下半身に熱が集まっていってしまう。

 

「……この年齢だと、まだまだ可愛らしい姿ですが。勃起、してきましたね、月くん」

 

 隆起し始めた僕の性器を見ながら、Lはとても嬉しそうにそう囁く。
 精通や、夢精という生理現象がどんなものなのか、学校の授業で習う前から知識として知ってはいた。
 けれど、中学三年生の時点で精通を迎えているのは半数程度だと授業で説明された通り、僕はまだ自分の経験としては、射精というものをしたことが無かった。
 今まで、自分に精通がまだ来ていないことについて、特別何か思ったことはない。その内、成長と共に自然と生理現象として現れてくるのだろうと、なんとなく思っていた。
 けれど初めて犯された時、僕がまだ精通を経験していないと知ったLは、ギラギラと目を欲望で輝かせながら笑った。

 

「そろそろ、月くんも射精が出来そうですね。楽しみです」

 

 自分の手で、僕の初めての射精を迎えさせたい。なんて、馬鹿げた楽しみ方が大人にはあるらしい。もっとも、Lが何歳なのかなんて知らないけれど。
 Lは僕の中から指を抜くと、ローションと腸液が混ざったものに塗れた指先で、僕の性器を扱き始めた。

 

「……ん、んっ」

 

 監禁されて、拘束されて、好き勝手にされている状態だというのに、恐怖に慣れてしまったせいだろうか。
 Lの湿った指先が僕の性器を包むように扱く度に、ゾクゾクとした快感が襲いかかってくる。

 

「……ぃ、や……だ」

 

 今まで、マトモに自慰なんてものさえ経験したことのない僕にとって、それは快感ではあったけれど、未知の感覚であり恐怖の対象だ。
 その感覚から逃れたくて身を捻ってみたが、しかしLは僕がこうやって嫌がってみせることすら楽しいらしい。
 僕の反応に興奮したらしいLは微かに息を荒くしながら、自身のジーンズに手をかけ、こちらへ見せつけるように自身の性器を曝け出した。

 

「……ひ、っ!」

 

 もう既に何度も見ているどころか、僕の深いところまで挿入されている、Lの性器。あるいは凶器に、息を飲む。
 血管が浮き出てた、赤黒い色をした、グロテスクとさえ言ってもいい生殖器官。もっとも、僕とLが行う性行為は結局のところ、子供を成すことなんて絶対にないのだから、それは生殖器官というよりは僕を辱め苦しめるための拷問器具か。
 いくら大人と子供の差があるとはいえ、あまりにも自分のものとは違う性器に、Lは僕とは違う、人間ではない何かなのではないかとさえ思えた。
 すると、Lは自分のそそり立った性器を僕のモノと擦り合わせるように脚の間に侵入してきた。

 

「こういうのはたしか、日本では兜合わせと言うそうですね。知っていましたか、月くん?」

 

「し、知らない……」

 

「そうですか、残念です。もしも知っていたら、優等生の月くんがどこでそんな知識を付けたのか聞いてみたかったんですが……。ですが、こういった知識に疎い月くんというのも新鮮ですね。開発の楽しみが増えました」

 

 Lはそう言うと、僕の唇を食べるような勢いで貪りながら、僕の性器に擦り付けるように腰を動かし始めた。
 ずりずりと、足の間や自分の性器に擦り付けられるLのそれが、気持ち悪いのと同時に恐怖だった。
 何より、お尻に当たるLの太ももに、挿入されて何度も激しく腰を打ち付けられた時のことが蘇って、体をぎゅっと縮こまらせる。
 けれど、そんな風に逃げようとする僕の体を全身で押さえつけ開かせながら、Lはとても心地良さそうにキスを続けながら腰を動かした。

 

「んっ、月くん……」

 

 恍惚とした様子で僕の名前を呼ぶLが薄気味悪くて、僕の舌先を捉えて離さないキスが気持ち悪くて、噛んで反抗したくなる。
 けれど、僕の生殺与奪を握っているLに、無計画に反逆なんて事をすればどうなるか想像もつかない。
 だから今だけは、こいつの好き勝手にさせてやろうと、必死にLの行為に耐える。
 けれど、長いキスから解放されてすぐ、楽しそうなLから囁かれた言葉に、本当に僕は壊れず耐え切れるのだろうかと涙が溢れた。

 

「では月くん、挿れますね」

 

 先ほどLに弄られた穴に当たる、熱を持った性器の感覚に、僕はまだ待って欲しいとLを涙目で見上げた。

 

「いや、だ……今日は、まだ……無理、入らない」

 

 仮に僕が大人だったとしても辛いだろうに、まだ大人ほど体が発達していない僕が、そう簡単にLのモノを受け止められるわけがない。
 いつもだって、もう少し指やら玩具やらで慣らされてから、ようやくといった所で挿入されていたのだ。
 それなのに、今日はまだ起きたばかりで、ほとんど解されてもいないような現状。あんな、悪魔のようなものが、僕の中に入るわけがない。
 けれど、Lは僕の抵抗に不機嫌そうに顔を曇らせると、親指を噛みながら首を傾げるばかりで、止めようとはしてくれなかった。

 

「だって、昨日の月くん、すぐに気を失っちゃったじゃないですか。あの後も何回か出しましたが、それでもずっと無反応のままで……。だから、今日は月くんが元気な内にシたいと思いまして」

 

 すぐに気を失った月くんのせいでもありますし、いいですよね。と、甘えるように首筋に舌を這わせてきたLに、ふざけるなと声を荒げる。
 昨日はそもそもLが玩具を使ってみたいと、ピンク色をしたローターやらアナルビーズといった物を沢山使ったせいで、僕が疲労困憊したから気を失ったというのに。それなのに、僕が気を失ってからも何度もしていたというのも信じられないし、気を失った僕が悪いという言い方に、身勝手にも程がある。と、Lを睨んでみたが、アイツは僕がここまで怒る理由が理解できないと首を傾げるだけだった。

 

「以前の月くんは、私がどんなプレイをしても、気を何回失っても、突き上げれば起きてくれたじゃないですか」

 

「知らない……知らないッ! 前の僕、前の僕って……そんなの、今の僕には関係ない! お前の馬鹿げた妄想に付き合うのはもう、うんざり――っ!」

 

 耐えきれないと、ついに声を荒げてしまった、その時だった。

 

「関係ないなど、許さない。夜神月」

 

 深淵よりも尚、暗い色を帯びた瞳が、僕のことを凝視しながら、そう言った。
 先ほどの、どこか幼稚で我儘な子供っぽい男は何処に行ったのか。
 今僕の目の前に居るのは、どうしようもない執着に呪われた、一匹の獣だった。

 

「私だけが思い出して、貴方だけが思い出さないなんて、そんなこと許しません。私だけが貴方への感情を抱えたまま生きていくなんて、耐えられません。必ず貴方には、以前の記憶を思い出してもらいます。何が何でも、絶対に」

 

 Lはそう、自分の中で改めて決意するような様子で言うと、僕のアナルに性器の先端をズブズブと挿入してきた。

 

「い、あ……っ、やめ! やだ、まだ、むりッ」

 

 体を裂かれるような痛みに、なんとかして逃げ出せないかと腰を浮き上がらせて暴れる。だが、すぐにLの両手が僕の太ももを掴んで、勢い良く腰を打ち付けてきた。

 

「あ゛――ッ、が、ああぁ! ひぃッ――あ、ぁ!」

 

 無理矢理ねじ込まれた性器が腹の奥、結腸を突き上げ、その更に先へと侵入してきた衝撃に、痛みで目の前が真っ白になる。
 ふと視界に映った自分の腹部は、そこはハッキリと分かる形で、Lの性器に押し上げられ膨れ上がっていた。その自分の肉体の変形に、壊されてしまうと本能的な恐怖が全身を支配した。
 痛みと恐れで息をすることさえ出来なくて、ガチガチに強張った体へ挿入したL自身にも痛みがあったのだろう。
 Lは少しだけ苦しそうに息を吐きながら、僕の目元に舌先を這わせ、涙を味わうように拭ってきた。

 

「月くん、痛いですよ。力、抜いてください」

 

「いあ゛――、でき、な……っあ゛!」

 

「大丈夫です。ほら、私に合わせて深呼吸をしてください」

 

 ワガママで泣きじゃくる子供をあやすように、Lは僕の体を抱き上げると、いい子、いい子と背中を撫で始めた。
 僕を苦しめてくるのはLのはずなのに、それでも痛みで頭が混乱している僕は、助けを求めるようにLが背中を撫でるのに合わせて、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
 そうやってLの言う通りにすれば、次第に体から力が抜けてゆき、とりあえずは目眩がするような痛みも引いていった。が、未だにジクジクと熟れるように痛むアナルや腹部に、僕は何度も深く呼吸を繰り返しながら、痛みに耐え続ける。
 一方、Lの方は締め付けも緩くなって快感を得られるようになったのだろう。心地よさそうな表情で、僕の中を堪能するように深い吐息をこぼした。

 

「よく出来ましたね、月くん」

 

 僕の体を優しく抱きしめながら、Lは子供を誉めるように穏やかな声色と共に、頭を撫でてきた。
 これだけ優しい素振りが出来るくせに、どうして僕のことをこんなに酷く犯すことが出来るんだろうかと、Lの優しさと容赦の無さに、頭が混乱する。
 けれど、Lの中では僕の頭を優しく撫でるのも、僕のことを監禁して毎日犯し続けるのも、全て整合性が取れている行為らしい。
 Lは僕の頬に触れるだけの優しいキスをいっぱい落としながら、グリグリと結腸を抉るように腰を僕に押しつけてきた。

 

「あ、あ゛……える、やだ、苦しい……痛いの、もう、できない……」

 

「はぁ……、たしかに、月くんのここ。すっかり萎えちゃいましたね」

 

 かわいそうにと言いながら、Lは痛みで萎れた僕の性器を指先で確かめるように揉み始めた。
 けれど先ほどと違って、痛みが未だに下半身を支配する現状、僕が再び勃起することはなかった。
 それが、Lにとって『かわいそう』だったのか、あるいは『気に入らなかった』のか。
 Lは僕の体を持ち上げながらベッドサイドの引き出しに手を伸ばすと、中から小さなケースを取り出した。
 それがいったい何なのか。涙のせいで見えにくい中、必死に目を凝らしていれば、Lがそのケースを片手で器用に開けてみせた。
 瞬間、中に入っていたものに、まさかと僕は怯えながらLを見上げた。

 

「そんなに痛いなら、こういうものもありますよ」

 

 そう言いながら目の前に差し出された注射器とアンプルに、あきらかに良くない薬だと悟った僕は、嫌だ止めてと何度も首を振る。
 しかし、Lは小動物が震えているのを見るような眼差しで僕を見ながら、安心してくださいと微笑んだ。

 

「たしかにこれは媚薬と呼ばれる類のものですが、心配いりません。効果は強いですが、中毒性は薄いものです。大丈夫です、月くんに粗悪な薬なんて使いませんよ」

 

「あ……嫌だっ、やめ、やめて……っ」

 

「ですが、私とのセックスが痛くて仕方ないんですよね? 月くんが痛がるのは私の望むところではありませんし、何より、セックスは互いに気持ちよくなければ」

 

 こんな、ただのレイプ、暴力行為に過ぎない状況で、何が互いに気持ち良くなければ、だ。Lの異様な思考回路に、ふざけるなと怒鳴りたい衝動に駆られるが、痛みと恐怖が怒りをやり場の無い涙に置き換える。
 しかし、そんな僕の涙を美味しそうに舐め上げながら、Lはどうしますかと僕に注射器を見せつけた。

 

「月くんが私とのセックスが気持ち良いなら不要な薬ですが……そんなに泣くほど、痛くて仕方ありませんか? それとも、泣くほど気持ち良いんですか? 教えてください、月くん」

 

 ここで痛くて仕方がないのだと正直に言えば、Lはなんの躊躇いもなく媚薬とやらを僕に打ってくるに違いない。
 つまりは、僕に残された選択肢は『今で十分このセックスは気持ちいいから打たないでくれ』と、馬鹿みたいにLに媚びる他ない。

 

「月くん……どうしましたか?」

 

 訪ねてくるフリをして、僕にその言葉を口にさせたいのだろうLが、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべる。
 そのニヤけた顔に噛み付きたいのを抑えながら、僕は顔を伏せて口を開いた。

 

「きも、ち、いい……から。える、との、せっくす……きもちい、い、から……このままが、いい」

 

 痛みと屈辱のせいで、みっともない涙声で懇願することになってしまった自分自身に失望する。
 一方、僕の口が紡いだ屈辱的な言葉に、この変態は酷く興奮したのだろう。
 俯く僕の顔を無理矢理自分に向けさせながら、Lは楽しそうな表情で首を傾げた。

 

「本当ですか? ですが、月くんのここ、萎えたままです……本当に、結腸をこじ開けられるのが気持ちよくて仕方ないんですか?」

 

「あ……ぅ、きも、ちいい……。奥、ぐちゅぐちゅされるの、きもちいい、から……このまま、してください。おねがい、しま、す……」

 

「そうですか。私は媚薬でぐずぐずになった月くんの方が好きなんですが、月くんにこんなにお願いされたら仕方ありませんね。大好きな月くんのお願いですから、ちゃんと聞いてあげます」

 

 何が大好きだと、一方的に暴力的な感情を向けてくる男に殺意が募る。
 一方でLは満足そうに頷くと、媚薬が入っていた注射器をケースごとベッドサイドの机の上に放り投げた。
 ようやく遠ざかってくれたそれに安堵したのも束の間、Lは僕の体を抱き抱えると、恍惚とした表情で耳元に顔を寄せてきた。

 

「では、月くん。始めましょうか。今日は、すぐに気を失わないでくださいね。たくさん、月くんの声を聞かせてください」

 

 その声が、ただの悲鳴であろうとも。
 瞬間、激しく突き上げられた衝撃と痛みに、僕は目を見開いて天井を仰いだ。

 

「あ゛ぁ――――ッ、あ゛!」

 

 ただ挿入されているだけでも苦しいのに、何度も容赦なく挿入を繰り返させられるせいで、目の前がチカチカとしてきた。
 このままだとまた意識を失って、Lに好き勝手体を弄くり回される。もしかしたら今度は、あの媚薬を打たれるかもしれない。と、意識を失わないよう、少しでも痛みが遠のくようにLの首筋に頭を埋めて堪える。
 それが甘えてくるように、Lの目には映ったのだろう。Lは僕の頭を撫でながら、可愛いですねと囁いた。

 

「っ、はぁ……月くん、気持ち良いですか? 私も、今……っ、月くんが求めてきてくれて、とても気持ち良いです」

 

「あ、あ゛が……ッ、はっ! あぁ、ああ゛、あ゛!」

 

「それに、月くんの奥を突いていると、私に吸い付いてくるような感覚がして……っ、はぁ、んっ! 月くんの体が、私を欲しがっているみたいですね。こういうのを相思相愛って言うんでしょうか」

 

 僕の悲鳴が聞こえていないのか、あるいは喘ぎ声にでも聞こえているのか。
 恍惚とした表情で愛とやらを語るLに、きっとこいつは人間によく似た、僕とは違う生き物なんだろうと諦観を覚えた。

 

「月くん、愛しています。っん、ふ……月くんはどうですか? 私のこと、好きですか? 私のことが好きだから、私とのセックスが、気持ち良いんですよね?」

 

「あ、ああ゛ぁ……んっ、うぅ……う゛」

 

「月くん、気持ちよくて言葉にならないのも分かりますが、私のことが好きだと言ってください。私も月くんに好きだと言ってもらいたいです」

 

 さぁ、早く。と、僕の首筋に噛み付いてきたLに、この男の言う通りにしなければ殺されると、恐怖が体を支配する。
 こんな事ばかりされて、好きになるなんてありえない。そんなことが理解できないストーカー思考の人間なのか。あるいは理解していながら、それでも僕から愛の言葉とやらを言わせて屈辱を味合わせたい鬼畜なのか。
 けれどなんであれ、ここでLの言う通りにしなければ、本当に僕は壊されてしまうのだと悟った本能は、僕の感情なんて無視して、Lの望む言葉を紡がせた。

 

「う、うぅ……すきっ、えるのこと、すき! すき、だから、きもちいい……い゛あ゛、があッ、はぁっ!」

 

「……っ! 本当ですか、月くん? なら、もっと、もっともっと……っ! たくさん、私のことが好きだと言ってください」

 

「すきっ! えるのこと、あ゛い、してる――っ、から! だいしゅき、だ、からっ! あ゛あぁ、うッ! もっと、ゆっく、し――あ、あああぁ! あ゛あ゛ッ!」

 

 僕の口から『好き』を引き摺り出した瞬間、玩具を扱うような勢いで僕の体を揺らし始めたLに、どうしてと懇願の視線を向ける。

 

「ひぃっ、ああ゛あ゛あ゛――ッ! すき、え゛るッ、すき! だから! やめ、やだ、だ、あああぁ――ッ!」

 

 もう自分が何を言っているのか、好きという言葉の意味さえ分からなくなりながら、必死に乞うように、Lに止めてくれと求める。
 だが、僕の悲鳴程度で止めてくれるような相手であれば、最初からこんな目に遭っているわけがない。
 それどこか、Lは僕の悲鳴染みた『好き』を聞く度に、恍惚とした様子で僕を抱きしめ、気持ち良さそうに息を荒くしていた。

 

「月くん――ッ! 私も、んっ、はぁ、私も好きです。月くんが好きでどうしようも無かったので、どうしても欲しかったので、監禁しました。今度こそキラを永遠に私のものにしたくて、私は――ッ!」

 

「う゛、がぁッ! ああ、あぁ! すき、やだ、すき、えるッ! えるッ!」

 

「月くんと同じ気持ちで、とても嬉しいです……っ! 今度こそ、一緒に幸せになりましょうね、月、く……っん!」

 

 ようやく、Lが果てたのだろう。
 僕の一番奥を貫くように根本までしっかりと挿入しながら、ぎゅっと僕を抱きしめて、ビクビクと体を震わせ始めた。
 その長い射精と、体の中に注がれる精液の量に、このまま自分の全てがLという存在に支配されるのではないかという不安が湧き上がってくる。

 

「はぁ……月、くんっ……はぁ、んっ」

 

 最後の一滴まで全て、僕の中に出そうとしているらしい。
 放心しきった僕の唇を貪りながら、Lは何度も僕の奥に性器を擦り付けてくる。まるで、僕のことを孕ませようとでもしているみたいだ。と思ったのは、あながち間違いなどでは無いのかもしれない。
 やがて、射精を終えたらしいLは、とても幸せそうな、恍惚とした表情で唇を離すと、甘えるように僕の頬に自分の頬をすり寄せてきた。

 

「とても気持ちよかったです、月くん。月くんも、気持ちよかったですか……?」

 

「あ、あぅ……ぁ、きも、ち……っ、よかっ、た」

 

「そうですか。泣くほど気持ちよかったんですね、嬉しいです。やっぱり、互いを思い合ってするセックスは良いですね」

 

 僕に無理矢理『気持ち良い』という言葉を言わせている事はLも理解しているだろうに、あるいは嘘だと理解してあえて楽しんでいるのか。とても満足げなLに、今日は早く解放されないだろうかと瞼を閉じた時だった。
 腕に、チクリと、鋭く冷たい感覚を覚えて、絶望に目を見開く。

 

「ひっ、あ、あぁ……なん、で」

 

 いつの間に手にしていたのだろうか。
 顔を上げれば、そこには先ほど僕に見せつけてきた注射器を打つLが、平然とした表情で居た。
 気付いた時には既に注射器の中の媚薬は無く、その全てが自分に打たれたのだと悟った僕は、どうしてだと困惑したままLを睨んだ。

 

「うそ……つきっ! 嘘つき! きもちよければ、うたないって! しないって、言った、のに!」

 

「打たないなんて一言も言っていませんよ。ただ、あの時だけ、月くんのお願いを聞いてあげただけです。ですが私は媚薬で敏感になった月くんも好きなので……今度は私のお願いを月くんが聞いてくれる番ですよね? それが、愛し合う二人の思いやり、というものでしょう?」

 

 だから、これからは媚薬で本当に気持ちよくなった月くんを見せてください。と、何の罪悪感もなく幸せそうな表情で語るLに、僕は限界だと声を荒げる。

 

「嫌いッ! お前なんか、大嫌いだ! 何が好きだ! 何が愛してるだ! 殺してやる、お前なんか、絶対に殺してやる! 苦しめて、絶望の中で、絶対に……ッ!」

 

 その言葉を口にしたのが間違いであったこを知るのは、すぐだった。
 Lは先ほどの恍惚とした表情から一変して、真っ暗な闇のような瞳で僕を見つめると、ポツリと言葉を吐いた。

 

「……やっぱり、月くんは前も今も、いつまで経っても、嘘つきですね」

 

 それがどれほどLにとって絶望的だったのか、前を知らない僕には推しはかることは出来ない。
 けれど、獲物に対して狙いを定めたような視線で僕を見据えたLは、不気味な笑みを浮かべながら告げる。

 

「大丈夫です。私が、全部、本当にしてあげますから。ねぇ、月くん」

 

 今度こそ、必ず。
 Lの言葉を最後まで理解する前に、体に回った媚薬が、僕の正常な意識を遠のかせる。
 それと同時に、先ほどまで痛みしか感じなかったはずの結合部分に、痛みとは異なる熱が集まっていくのを感じた。

 

「ぁ、いや、だ……あつ、あつい……やだ、はなせ……っ、離せッ!」

 

「ああ、さっそく効いてきましたね。いい反応です」

 

 僕が足の上で暴れるのを抑えながら、Lは再び僕を突き上げるように腰を打ち付けた。
 先ほど射精したばかりなのに、萎えることなく未だ固さを保ったままのLの性器は、的確に僕の中を押し上げる。
 先ほどまではその行為に、ただただ内臓を圧迫される吐き気のような痛みしか感じなかった。はずだ。
 それなのに今、僕の中に湧きあがったのは、言葉にし難い、痛みを伴う快感だった。

 

「うッ、うぅ――んっ!」

 

 Lの性器の形に膨らんだ自分のお腹を見つめながら、先ほどとは違う悲鳴が喉の奥から強制的に搾り出される。
 そんな僕の声が面白かったのか、Lはどうしたんですかと揶揄うように首を傾げながら、押しつけるように腰を回して動かした。

 

「面白いですね。私がこうして動く度に、月くんの体がビクビク震えて……そんなに気持ち良いですか?」

 

「ちがッ! やめッ、それ、やだ……っ、おなか、いたい……い、ひぃっ!」

 

「痛いんですか? でも、その割には月くんのここ、また勃起してきましたけど」

 

 Lがそうあざ笑いながら指し示してきたのは、先ほどまで縮こまっていたはずの、僕の性器だった。
 そしてそこは確かにLの言う通り、先走りを微かに垂らしながら、その形を大きく固く変形させていた。

 

「月くんが本当に気持ち良くなって何よりです……それにしても。前立腺への刺激ではなくて、結腸の方で先に快感を得られるようになるなんて、月くんにはやっぱり素質がありますね。また以前のように開発するのが楽しみです」

 

「ちがう……っ、ちがう! やだ、おなか痛い、やだ、やめろ……はなせ」

 

「以前の月くんは、乳首を弄るだけでイクことが出来たんですよ。今の月くんは可愛い陥没乳首ですが、すぐに服に擦れるだけでイけるようにしてあげますね」

 

 Lはそう言いながら、僕の胸の辺りを吸い上げると、僅かに現れた小さな乳首を舌先で潰したり、引っ張ったりしながら遊び始めた。

 

「んっ……ぅ、あ、それ、や、だ……っ」

 

 その昔、粧裕がまだ赤ちゃんだった頃に見た、授乳の光景と似ているようで、違う。僕の真っ平な胸にむかって美味しそうに吸い付く、Lの異様な光景。
 ただ単純に、気持ち悪いと表現すればいいだけのはずなのに、これも媚薬のせいなのか。ちゅうちゅうと水音を立てながら吸われる乳首の感覚に、恥ずかしさと共に言いようの無いもどかしさに襲われた。
 その舌先から逃れようと、背を仰け反らせてはみるものの、すぐにLの節ばった手が、僕の背中を抱きとめLの元へと引き寄せた。

 

「んっ、はぁ……可愛い反応ですね、月くん。以前は出来ませんでしたが、今度はここから母乳が出るくらいまで仕込んでみても面白いかもしれません。ふふ、今からこの小さな乳首が、真っ赤に膨れていくのが楽しみです」

 

 Lはそう言いながら、僕のもう片方の乳首を指先で弾くと、満足そうに顔を離した。
 ここの刺激だけでイクとか、母乳が出せるようになるとか、側から聞いていればなんて馬鹿げた話なんだろうかと思う。が、きっとLのことだ。本当に実現させてしまうのではないかという執念を感じて、自分の体が改造されていく恐怖に身が震えた。

 

「さて……ではそろそろ、月くんに初めての射精を教えてあげましょうか」

 

 Lはニヤリと口角を吊り上げながら、繋がったまま僕の体をベッドに仰向けで寝かせた。
 先ほどからずっと素肌で感じていたLの温度から離れられたことに、普段であれば安堵していただろう。
 けれど、ずっと繋がったままの性器とアナルが、僕はちっともLから離れられていないのだと理解らせてきた。

 

「……本当に、よく月くんの小さな体に、入っているものですね」

 

 自分でやっておきながら驚きます。と、Lは僕との接合部分を指先でなぞりながら、興味深そうにその部分を凝視した。そして、Lの視線はやがて上へと昇っていき、Lの性器によって押し上げられ形の変わった、僕のお腹へと向けられた。

 

「ああ……こんなになってまで私を受け入れてくれるなんて、嬉しいです月くん。月くんの中は本当に、温かくて、気持ちよくて……。まるで、私だけのために作られたような……」

 

「っ――、ぅ、あ」

 

「だからきっと、私のモノも、月くんを気持ち良くするために作られているのかもしれません。私たちの頭脳が、互いにしか理解し切れないように、私たちの全てが互いのために作られているんです」

 

 こんな状況で、よくもまぁロマンチック染みた言葉が出てくるなと、Lに憎悪を募らせた時だった。

 

「ひぃ、ひゃあっ――! んんんんっ、あぁっ!」

 

 Lが突然、激しく腰を打ち付けるように動かし始めた。
 先ほどの騎乗位とは違って、自分の体重による肉壁を抉るような感覚はないものの、何度も何度も早く打ち付けられる性器に、呼吸が出来なくなりそうだった。

 

「やめっ! ひぃあ、ああぁっ! はげ、し――! える、まって! や、あ゛っ! ああぁっ!」

 

 開いたままの口から、突き上げられる度に、甲高い声が出てしまう。
 直腸の肉壁を押し開くように、長いストロークで何度も出し入れを繰り返される度、肛門付近の前立腺と、奥の結腸が交互に刺激されて、訳のわからない感覚に支配される。
 それが快楽だと気付いてしまった頃には、僕はもうすっかり、口から溢れる唾液も止められないほどに、目を見開いて喘ぎ声を上げていた。

 

「面白い顔ですね、月くん。いつもの子供らしくない表情も好きですが、そういうぐちゃぐちゃになった顔は、もっと魅力的です」

 

 たまりません。と、僕の上へ覆いかぶさりながら、Lはだらしなく垂れてしまった僕の唾液を舐め上げて、そのまま舌先を絡ませてきた。
 さっきまで、媚薬を打たれるまでは、そんなキスさえ嫌悪の対象だったというのに。今はどうしてか、Lによって絡め取られ、嬲られるように甘噛みされる舌先が、どうしても気持ちが良い。
 そんな自分の変化に、最悪だと考えることさえ出来ないほど、Lのキスも、奥を突き上げられるのも、どちらも僕に途方もない快楽を与えてきた。

 

「月くん……イってください。否、私の手で早く達ろ、夜神月」

 

 そう、Lが僕の目を覗き込んだ後、首筋を強く噛んだ、その瞬間だった。

 

「ひぃ――――っ、んあ゛あ゛ぁ!」

 

 体が壊れたように痙攣を繰り返して、目の前が真っ白になる。
 それと同時に、性器から何かが溢れるような感覚がした。が、それが精液でないことは、Lのキョトンとした表情と、全身に降り注ぐ生暖かい水の感覚によって、すぐに気付くことが出来た。

 

「あ、や……っ! なん、で……」

 

 僕の性器から溢れたのは、精液ではなく、透明な尿だった。
 崩壊するように、一度に溢れたそれは僕とLのことを一瞬で汚したかと思うと、その後はチョロチョロと力なく吐き出され、ベッドのシーツを水浸しにした。
 この年で粗相のようなことをする事になるとは思わず、恥ずかしさと屈辱に顔を赤らめていると、Lは心底嬉しそうな様子で、自分の腕にかかった僕のそれを舐めた。

 

「まさか、射精よりも先に潮吹きをするなんて……本当に月くんは、キラなんかよりもこちらの方の才能がありますね」

 

「しお、ふ……き?」

 

「ああ、まだこの知識もありませんか……。大丈夫ですよ、月くん。そんなに心配しなくても、ただ媚薬を使っているとはいえ、月くんが淫乱で感じやすいという事だけの話ですから」

 

 本当に素晴らしいと、Lは何度も僕の頭を誉めるように撫でる。
 それでも、Lが言った潮吹きというのが、本来はよほど開発されなければする事が無いのだという事は――自分が思っている以上に、快楽に弱いのだという事は、言葉にされずとも察することが出来た。

 

「ちが、ちがう……っ」

 

 僕は、父さんの自慢の息子で、一番の優等生で。
 だから、こんな風に犯されて、ただ射精するよりも激しい果て方をするなんてことはありえなくて。こんなの、何かの間違いで。
 そんな風に、今までの自己像と合わない、変わり果ててしまった自分の姿に絶望する僕の姿が、Lにはたまらなく興奮材料になったのだろう。
 Lは幸せそうに頬を緩めると、再び僕の意識を飛ばすような勢いで、深く腰を打ち付けてきた。

 

「月くん! もっと、もっと壊れてください! 二度と、私を拒絶しないくらい、もっと快楽に染まって、何もしなくても私を自分から求めてくるくらい、たくさん……っ!」

 

「ああっ! ああ、あ゛ぁ! やだ、える! やだ、こわれたくない! やだ、やだやだ! える! える!」

 

「月くん、いいです、私の名前、たくさん呼んでくれて……っ、はぁ! ああっ! 気持ち良いです、月くん、また、イキ、そう……で、んッ!」

 

 Lがそう微かに眉を顰めた途端、今日で二回目の精液が、僕の中に注がれた。
 ただでさえ多いLの精液が再び入ってきて、僕のまだ未熟で狭いアナルでは全てを受け止めることなんて到底出来ず、遂に収まり切らなかったものが逆流するように溢れ出ていくのを感じる。
 そんな結合部分から溢れた精液を指で掬いながら、Lはドロドロに汚れた指先を僕の開き切った口元に運び、精液に塗れた指をしゃぶらせた。

 

「ふふ……おいしいですか、月くん? いつか月くんが初めて射精できた暁には、二人で一緒に、月くんの精液を味わいましょうね」

 

 私も早く飲んでみたいですと、やがて来るであろう未来を想像して恍惚とした表情を見せるLに、いったい何時になればLを殺して逃げ出せるのだろうかと空想に逃げる。
 けれど、ぐったりと倒れ現実逃避を考え始めた僕でも、Lを殺すよりも先に射精が出来るようになるのが早いだろうということは、安易に想像がついた。

 

「せっかく、今回は月くんが中学生の時に出会えたんですから。たくさん、私と一緒に初めてを経験していきましょう」

 

 再び僕の中で固さを取り戻していくLの性器に、まだまだ今日の行為は続くのだろうと絶望しながら。
 僕は、Lの愛おしげに囁かれる声に、耳を塞ぐことも出来ずに犯され続けた。

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