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「​どっちか悩ましいので」

「月くん、これはあくまで捜査の一環として聞きたいのですが、お伺いしてもよろしいですか?」

 

「捜査の一環なら、別に答えない理由はないけど。どんな質問なんだ?」

 

「はい、聞きたいことというのが……月くんは童貞ですか?」

 

「……今日の質問はまた突然だな。しかも、まったく捜査に関係なさそうな至極個人的な内容にしか思えない」

 

「と、疑われると思ったので前置きをしたのですが」

 

「本当に捜査の一環なんだよな? …………まだ、女性とそういう経験はないよ」

 

「女性と限定するということは、男性とは性交の経験があると?」

 

「違う、どっちも無い。あー……こういう直接的な言い方は好みじゃないけど、童貞だし処女だよ」

 

「そうでしたか。月くんはミサさんを初め、多くの女性とお付き合いしていたようですから既に経験済みかと思っていましたが。では、童貞の理由をお伺いしても?」

 

「理由って……、単純に、将来を真剣に考える相手とまだ出会ってないからだよ。どれだけ避妊しようが100%じゃないからね。友達にはさっさと卒業したいって深く考えずにヤってた奴も居たけど、僕はそういう行為については、互いに責任の取れる年齢になって、本気で将来を考え合える相手じゃないと僕はする気になれないな」

 

「なるほど、つまり私は条件に当てはまりますね。いやはや安心しました」

 

「……なんの話だ? というか、これが捜査の何に役立つんだ?」

 

「ええ、ここ最近ずっと考えていたんです。もしも月くんをベッドで押し倒した時、どんな反応をしてくれるのか」

 

「ベッド、え?」

 

「月くんは経験豊富そうですから、私が迫っても経験者としての余裕を持って『へぇ、竜崎。お前は僕に興奮するのか。面白い、お前がそんなに欲しがるなら抱かせてやるよ。ほら、僕でどんなことをしたいんだ? 言ってみろよ。それとも、僕に舐めたり動いたりしてほしいのか? いいよ、今日は気分がいいから、お前が要望するプレイならなんだって応じてやる。ほら、お前が僕を監禁しながらその利口な頭で考えてた妄想、全部言ってみろよ。お前のその頭の中で、どうやって僕を犯してたんだ、変態?』と、妖艶な笑みで受け止めてくれるのではないかと思っていたんですが」

 

「???」

 

「ですが、実は童貞だったと聞いて、ここはむしろ『待ってくれ竜崎、僕は、その、初めてなんだ……。キスの経験があるくらいで……ずっと僕のこと監視してたお前なら知ってると思うけど、その、じ……自慰もそんなにした試しがないし。でも、お前、絶対にちょっと変態なプレイとか好きだろ? そりゃ、竜崎のしたいことには全力で協力したいけど、やっぱり怖くて。だから、竜崎……初めては、出来れば優しくしてほしい。変な玩具とか使うなよ? ま、まぁ、慣れてきたら、小さいのだったら、使っても、いい、けど……でも最初は、全部竜崎が触れてくれなくちゃ嫌だ。それを約束してくれるなら、いいよ、竜崎。僕の初めて、全部お前に捧げるから』と恥じらいつつも期待の眼差しでこちらを見つめてくるという展開もありですね」

 

「(駄目だ、竜崎が何を言っているのか理解できない……なんだこの、AVの展開みたいな妄想は)」

 

「月くん、ありがとうございました。私の夜のオカズの為の捜査が大変はかどりました」

 

「…………なぁ、竜崎」

 

「はい、なんですか?」

 

「今からでもこの会話、夢落ちってことにしないか?」

 

「夢落ちにするならついでにどっちかの妄想に付き合ってください。私の希望としては実現できそうな月くん童貞パターンより、月くん蠱惑パターンが……」

 

「はいはい夢でした! 夢落ち! 以上!」

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