「間違いないので」
「進展のないキラ捜査にも飽きました……もう月くんがキラで間違いないので、このまま逮捕でいいんじゃないでしょうか」
「竜崎……お前のやる気が無いのは分かったから、適当に僕をキラ認定するのは止めろ」
「適当ではありませんよ。月くんがキラだったのは間違いありません。ですが、第三のキラは第一のキラの雑な模倣しかしていませんし……どうでしょう月くん、逮捕はしますが司法には引き渡さず私の元で秘密裏に監禁する方向にしますので、キラとして捕まってくれませんか?」
「なんでそれが交渉になると思ったんだ。というか、あの『L』に監禁されるとか、死刑と同じくらい怖いな」
「何が怖いんですか。別に何もしませんよ。ただちょっと永遠に外に出ることが出来なくなるだけで」
「普通に嫌だ」
「終身刑でも同じことじゃないですか。ねぇ、いいじゃないですか月くん。ちゃんとお世話しますので。散歩も連れていきます」
「ペットを飼いたがってる小学生みたいな言い方をするな」
「逃げ出したら爆破する首輪くらいは付ける予定なので、まぁ、見た目はペットぽくなりそうですね。耳と尻尾も付けて『ご主人様』と呼ばせる古典的なプレイも嫌いではありません」
「あはははは、絶対に嫌だって確信できたよ竜崎」
「いいじゃないですか、金持ちのペット扱い。キラである時点で人権なんて保証されないも同然なんですから、どこぞの国の怪しげな機関に捕獲されるよりはよっぽど幸せな人生になりますよ。キラを捕まえるために立ち上げられた組織の生活力が私より低い子供のトップに一生誰の声も目も届かない所で死ぬまで閉じ込めますとか言われるよりいいじゃないですか」
「なんだか嫌に具体的だな……」
「どうですか月くん。大丈夫です、ひもじい思いもさせませんので」
「別にその辺は心配してないよ。キラ捜査のためにこんなに立派なビルを建てちゃうくらいの相手だし?」
「はい、月くんに馴染みのある日本食をメインにしますし、ポテチもコンソメ味を用意します。あと、下の口から注ぎ込む白い液体もお腹いっぱいあげますのでご心配なさらず」
「あーーーーお前の口からセクハラ親父みたいな台詞聞きたくなかったよ! あと、別にそんな心配もしてない!」
「そうですね、心配するような余裕なんて毎晩与えていませんからね」
「本当にな! そんな不摂生な生活しておいてなんで毎晩毎晩あんなに元気なんだ!」
「ところで今思ったのですが、これ別に監禁じゃなくて結婚でもいいですね。月くんどうですか、私と結婚しませんか?」
「こんなにムードも何もないプロポーズを受けることになるとは思わなかったよ。あと、監禁と結婚が同義だと思っているヤツとは価値観が合わない」
「ほら、結婚は人生の墓場と言いますし。墓場より監禁の方がましじゃありませんか? それとも月くんはご両親のような仲睦まじい結婚生活をご希望で?」
「そりゃ、普通は、そうだろう。父さんと母さんのことは、信頼し合っているいい夫婦だと思うし、僕だって」
「いえ、月くんみたいに内心女性を下に見ているタイプの人間では無理ですね。どう考えてもDV一直線です。あとキラになった月くんなら他人の恋愛感情なんて余裕で利用するタイプなので、その時点で結婚も相手を利用するための手段にしかなりません」
「お前は僕になにか恨みでもあるのか? とりあえず後で一発殴らせろ」
「私は事実を言ったまでなので。ですが月くんのそんな欠点も、私相手なら見事解決です! 私なら月くんと同じくらい頭がいいですし、何より体の相性が最高なので恋愛感情で利用しようと思う前に月くんの方から体が疼いてそれどころではありません。どうですか月くん、私と結婚しませんか? 絶対に退屈させませんので」
「あーはいはい、分かった分かった。僕が本当にキラだったら結婚してあげていいよ」
「月くんのサラっと言質を取らせてしまうその隙がある所、嫌いじゃありませんよ」
「僕はキラじゃないからね、これは隙じゃなくて余裕ってやつだよ」
ちなみにこの後、結局僕がキラだったし、Lを殺す作戦は失敗するし、本当に結婚することになる。