「色々捗るので」
「月くんは眉目秀麗を体現していると言ってもいいほど容姿が整っていますが、そう思うと妹さんもかなりの美人ですね」
「なんだ竜崎、突然。まぁ、たしかに粧裕は家族の贔屓目があるとはいえ可愛いと思うよ。将来が楽しみだ」
「将来と言わず、今も十分愛らしいですが。月くんは恋人といい妹さんといい、美女に囲まれてうらやましいものです」
「ははは、お前にもそういう感情ってあるんだな」
「そうですね。どうですか月くん、ここは妹さんの方を私に紹介していただくというのは? 幸せにしますよ」
「竜崎、世の中には言っていい冗談と、言っちゃいけない冗談があるんだ」
「今の私は後者だと?」
「いや、今のは言ったらぶん殴られる冗談だ。良かったな、僕の手がお前と手錠で繋がってて。まだその冗談を続けるようだったら僕が巻き添えになるのも関係なしに殴るからな」
「はぁ……月くんは妹さんの交際相手に口を出すタイプなんですね」
「僕は粧裕が選んだ相手なら何も文句はない。ただ家族としてどうしても看過出来ない相手というのは居るだろう? その筆頭が竜崎、お前だ」
「私、資産も知性も世界トップ5位には入るくらいの配偶者としては優良物件なんですが」
「ははは、竜崎。お前が何歳か知らないが、少なくとも成人男性が中学生の妹を紹介してくれという時点でお前は悪徳物件なんだ。諦めてくれ」
「なるほど。ところで、24歳が大学生を将来的なパートナーに選ぶのは月くん的にはどう思いますか?」
「(ミサのことを言ってるのか? そういえば大学でミサと顔を合わせた時にファンだとか言っていたような……)まぁ、それくらいなら普通の歳の差じゃないか? 互いに交際に責任が持てる年齢だろうし」
「そうですか、その辺りの月くんの認識が分かって安心しました」
「うん? あ、そう……(ミサのことを狙っているという牽制か? まぁ、別にミサと付き合っているわけではないから、あのミサが心変わりするなら勝手にすればいいと思うけど)」
「しかし残念です。粧裕さんと婚姻すれば月くんと親族になれて、月くんが私のことを『義兄さん』と呼んでくれると思ったのですが……」
「なんで僕にそう呼んでほしいんだ? というか、その為に粧裕と結婚するってなんだ。本当に殴るぞ」
「月くんは妹が居るので『兄さん』と親しみを込めて呼ばれることへの憧憬が理解できないのでしょう。やはり、こちらを尊敬の眼差しで見つめながら敬称で呼ばれるというのは、こう、(性的な妄想が)色々と捗るんですよ」
「何が捗るんだ、捜査か? いや、まぁ……その程度で竜崎のやる気が戻ってくるなら、いくらでも呼ぶけど」
「本当ですか月くん嘘じゃありませんね嘘だったら許しませんよこれで嘘だったら月くんがキラですキラで確定です今すぐに警察に引き渡すことなく私の名の元で一生監禁しますよいいですか?あ、まってください月くんを一生監禁ですか最高じゃないですかそれなら嘘でもいいかもしれません嘘ということにしませんか月くん」
「怖い怖い怖い! 突然ノンブレスで捲し立てるな! 驚くだろう!」
「それで、本当に私のことを『兄さん』と呼んでくれるんですか? くれないんですか?」
「だから、そのくらい良いって言ってるだろ」
「では、今すぐ、私の目を真直ぐに見つめて、言ってください! さぁ!」
「あ、あぁ……に、兄さん?」
「ッ――――! これは、捗りますね」
「そ、そうか。竜崎(の捜査へのやる気)が捗るならよかったよ」
「はい、とっても(妄想が)捗りました。ありがとうございます月くん」
その後、Lのパソコンには月との「もしも夜神月がワイミーズハウスに引き取られてたらIF、Lと兄弟の契りを交わすまで編」が書き綴られているのであった。