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「​自慰問答」

2004年6月15日
夜神月 監禁15日目

「こんばんは、夜神くん。体調はいかがですか」

 

「別に、大丈夫だ……。いい加減、僕の話を聞いてくれる気になったのか」

 

「貴方がキラではない。という話については、聞くつもりがありません。未だにキラによる裁きは再開されていないので」

 

「そうか、じゃあ、僕が話すことは無いよ……。僕がキラじゃないって考えるようになったら、また声をかけてくれ」

 

「いえ、今回は夜神くんと、健康面に関して重要な話をしようと思いまして」

 

「健康面……? たしかに、ずっと拘束されていて、体中あちこち痛いけど」

 

「そうではなくて、生理現象の方……単刀直入に聞きますが、そろそろ自慰がしたくなる頃かと思いまして」

 

「は、はぁ……? 突然、何言ってるんだ」

 

「そんな、生娘のように恥ずかしがらなくて大丈夫ですよ、月くん。男性の生理現象として、ごく自然なものですので。何か要望があれば聞きますが、ご所望の物等はありますか?」

 

「……無いよ、そんなもの」

 

「そうですか? 安心してください。この会話を聞いているのは私以外に居ないので、遠慮せずに言ってください。どんなポルノが好みですか?」

 

「だから! こんな状況で抜きたいとか、そんな欲求、出てくるわけないだろう……。というか、仮に抜くとしても、カメラに監視されてるような場所でする趣味は無いよ」

 

「なるほど、だから月くんは自宅に監視カメラが仕掛けられていた時も、一度も自慰をしなかったんですね。つまり、貴方はあの時、どうにかして監視カメラが仕掛けられていた事に気付いていたと」

 

「違う……! ただ、その、本当に性欲みたいなのが薄くて」

 

「その割りには、部屋の本棚にグラビア本を隠していましたが」

 

「そんなことまで調べたのか?!」

 

「カメラで監視していた際に見かけました。まぁ、ポルノと呼ぶには健全な部類で、あれで自慰が行えるのは若いからとしか言いようが無いものでしたが」

 

「……っ! ぼ、僕がどんなの持っていたって、キラ事件に関係無いだろう」

 

「ともかく、夜神月は禁欲主義ではなく、またグラビア本を隠し持つ程度には性的な興味もある。その上、大学入学の少し前から同時に多数の女性との交際までしている。通常、こういう行動を取るのは性欲を発散させる機会を多く持ちたいからと考えられますが……それでも、性欲が薄いで付き通すつもりですか?」

 

「た、たしかに、女の子と遊ぶことは多かったけど……でも、それは相手から告白してきて、一回デートするだけでもいいって言うから、仕方なく」

 

「仕方なくつまらないデートに付き合って、一晩の性行為を楽しみたかったのでは?」

 

「違う! 僕は、そういう不誠実なことはしないし、いくら男側とはいえ、不特定多数とのセックスはリスクがある。別に、ヤリたかったわけじゃない」

 

「なるほど……では、月くんは人生で一度も自慰をしたことがないんですか?」

 

「な、なんでそういう問いになるんだよ! というか、こんな質問、キラ事件に関係ないだろう!」

 

「いえ、重要な話しです。たとえばキラとして裁きを行うことで一種の達成感、解放感、充実感を抱いていた場合、その影響で自慰に意識が向かなかった。あるいは……キラならばありえないと思いますが、罪悪感によって性欲が抑制されていた可能性も」

 

「だから、僕はキラじゃない!」

 

「キラで無いならば、貴方がごく普通の学生だったならば、性欲があってしかるべきでは? なので、月くんの性欲がどの程度なのか把握したい。そして、健康面への配慮として、自慰の機会を与えたい。私の考え、分かりますよね?」

 

「本気でキラ事件の調査と、僕の為だって言うのか?」

 

「はい、そうです。それで、月くんは普段、どれくらいの頻度で自慰をするんですか? 最後に自慰をしたのはいつですか? これはLとしての質問です、月くん。答えてください」

 

「くそ……! ま……前は、週一くらいでしてたけど、受験とかで、忙しくて……最近は、して、ない」

 

「週一のペース……月くんの年齢にしては少ないですね。それで、以前は受験や新生活で忙しく自慰はしていなかった。しかし、現在は監禁されて暇を持て余しているかと思いますが。自慰、したくありませんか?」

 

「…………」

 

「月くん、何度も言いますが、自慰というのは生理現象の一種。排泄欲となんら変わりません。何より、監禁という極限状態では本能として欲求が高まっているものです。それを我慢することは、健康面において悪影響を及ぼします。キラ事件解決の前に、容疑者の月くんに体調を崩されるわけにはいかないんですよ。それとも、月くんは私が個人的な趣味で貴方に自慰行為のことについて聞いていると考えているんですか?」

 

「……いや」

 

「なら、円滑な捜査にご協力いただくためにも、どういったポルノが好みかお伺いしてもよろしいですか? それとも、貴方の部屋にあったものと同じものを用意しますか?」

 

「…………別に、犯罪ぽいのは好きじゃないから、それ以外なら、なんだって」

 

「犯罪風味のもの以外、ですか。正義感の強い、月くんらしい好みですね。では、週一で自慰をしていたということなので、もう二週間以上経過して溜まっているでしょうから、さっそく用意しましょう。というわけで……失礼します、月くん」

 

「って、なんでお前が僕の牢屋まで来てるんだよ! いつのまに来たんだ?!」

 

「最初から奥のスペースに居ました。では月くん、こちらにポルノを用意しておきましたので、ご自由にお使いください。私は監視のため、この場に待機していますが」

 

「は? お前の前でしろっていうのか?!」

 

「月くんが自慰をするために手錠を一時的に外すので。食事や入力の時も同様でしょう?」

 

「いや、だとしても、せめてカメラ越しにしてくれよ」

 

「キラ容疑者の手錠を外すんですよ。そんな不用心なこと出来ません」

 

「だったら! しない、こんなものいらないから回収して、さっさと目の前から消えてくれ!」

 

「はぁ……分かりました。では、私が直接、月くんの自慰を補助します」

 

「…………ほじょ?」

 

「はい、問題の早急な解決を目指して、補助を行います。大丈夫ですよ月くん。貴方は目をつぶっているだけでいいので。ああ、それかポルノで見たいページがあればそちらを開いて見ていてもかまわないので」

 

「やめ、おい! いいって言ってるだろ! やめろ! 近寄るな! 竜崎!」

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